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ケース紹介115 Hさんの事例

50代 / 男性 / 会社員

借入の理由:住宅ローン、離婚


厚木市居住の50代男性のケースです。

離婚後の住宅ローン残債務の請求を受けたとして、相談に来たものです。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

住宅ローンと離婚

結婚、子が生まれた後、銀行で住宅ローンを組み、戸建てを購入しました。

持分は土地建物いずれについても、義母と共有、義母は相談者の住宅ローンについて連帯保証人となりました。

購入資金の一部を援助してもらうような場合に、このような共有、保証という状態になることも多いです。保証人にはならず、担保提供のみの物上保証人となっていることもあります。

このような自宅を購入したものの、妻と離婚。

土地・建物の相談者の共有持分については、財産分与として妻に譲渡し、移転登記手続をすること、住宅ローンについては、妻が履行引受をすることが約されました。

自宅を退去し、元妻に対して明渡しも完了。

 

住宅ローンの滞納

その後、相談者は再婚などし、生活環境が大きく変化。

しかし、そんな矢先、銀行の保証会社の担当者が突然、自宅を訪れ、元妻が住宅ローンの支払を滞納し、信用保証会社により代位弁済が行われたこと、財産分与を原因とする共有持分の移転登記も行われていなかったことを聞かされました。

物件の任意売却を試みるも、リフォーム代に相当金が掛かるという理由でなかなか購入希望者があらわれず、売却には至りません。

物件について、担保不動産競売開始決定が出されました。

競売により競落されるも、約1000万円の債務が残る状態となってしまいました。

その他、日常的に利用していたクレジットカードの債務も約200万円あり、両方を支払うのは難しいとして自己破産を希望しての相談に来たものでした。

 

 

申立準備中の交通事故

自己破産の申立準備中に交通事故被害を受けることもあります。

破産では、申立後の裁判所の破産手続開始決定時に持っている財産、負っている債務が問題となります。

そのため、申立前に事故がある場合、損害賠償請求権が財産として、逆に賠償義務がある場合には債務となります。

とくにケガが大きいような場合には、治療が終了しないと後遺障害に関する損害が確定しないなど問題が残ります。自己破産申立て時期が遅れることもあります。

そのため、自己破産では、必要以上に申立準備に時間をかけるのではなく、早めの申立をしておくべきです。

今回も、若干の後遺障害があったため、自分の保険会社から人身傷害補償としての受給、物損、人身傷害の相手方保険会社との関係などが問題になりました。

 

 

住宅ローンと離婚時の財産分与

離婚時の財産分与では、結婚期間中につくりあげた財産を分けることになります。

自宅のような不動産で、住宅ローンの抵当権が設定されている場合には、その価値が問題となります。

住宅の価値からローン残高を差し引いてプラスであるかどうか、すなわちオーバーローンかどうかで財産分与の対象になるかどうか変わってきます。

財産分与の対象となる財産額の計算では、プラスの財産の評価額から住宅□-ンなどの債務の額を差し引いて計算するのが通常です。

今回のように競売等でも債務が残ってしまう場合には、オーバーローン状態なので、本来は財産分与の対象外となります。ただ、そのような物件でも、配偶者が居住継続を希望したり、本件のように親族の共有が入っている場合、住宅ローンを支払い続けることを事実上の条件として財産分与として譲渡することもあります。

 

この場合、住宅ローンを借り換え等してくれればよいのですが、通常、金融機関の審査は通りません。

そのため、配偶者名義のままの住宅ローンを事実上支払っていくというケースが少なくありません。

そうすると、何年後かに、本件のように支払いができていないとして、住宅ローンの請求がされるというリスクが出てくるのです。

 

離婚時の財産分与では、とくに離婚を急ぎたいがために、配偶者の希望どおりに、このような合意をすることがあるのですが、将来にわたりリスクを背負うことになるので、あまり勧めていない方法です。

 

配偶者への求償

本件のように、配偶者との間で債務の履行引受や債務引受がされているような場合、住宅ローンを負担した場合には、配偶者に対して、求償権がないかという検討が必要になることもあります。

もっとも、仮に、何らかの権利が想定でき財産になるとしても、多くの場合には、配偶者には資力がない、そのため住宅ローンを負担できなかったという事情があるため、これだけを理由に、財産あり、管財手続という話にはならないでしょう。

本件についても、この点は問題にされず、免責許可まで出ています。


 

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