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ケース紹介

 

ケース紹介130 Tさんの事例

30代 / 女性 / 会社員

借入の理由:出産、育児費用、離婚


神奈川県厚木市在住の30代女性のケースです。

夫と離婚し、出産や育児費用で作った借金について、任意整理をしたものの払えないとの相談でした。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.17

 

妊娠による減収

当初、三菱UFJニコスでカードを作り、主にショッピングや若干のキャッシングをしていたとのことです。

会社員として働いており、収入の範囲内で使っていました。

その後、妊娠し、会社を休職。

収入が減ってしまった補填や出産準備にかかる費用をエポスカードなどから少しずつ借りていきました。
復職すれば収入が戻るので支払えるものと考えていました。

ライフプランにおいて、収入が一時的に少ない時期に、蓄えがないため、借り入れによって生活費等を補填することは問題ありません。


収入がその後戻るのであれば、そこから支払えることになります。


このように、長い目で見て、一時的な資金不足を補填するのであれば、本来の借金の使い方ではあります。

ただ、その借り入れをクレジット会社などからすると、利息が高かったりするので、融資を受ける際には、利率の比較等はしておいた方が良いでしょう。


当然ながら、無利息で貸してくれるような親族がいるのであれば、貸金業者、クレジット会社よりもそちらから資金調達したほうが、その後の返済はラクになります。

 

養育のための車

労働金庫でローンを組んで車を購入。子供を乗せるための車でした。

しかし、この車は、購入して1年程度で事故に遭ってしまい、廃車になりました。
その後の返済は、復職していたため、ボーナスで支払うなどして、対応ができていました。

自動車については、高額な買い物になります。
近時、その必要性については疑問が叫ばれていますが、お住まいの地域によっては必要だったり、通勤に必要だったり、小さい子供がいる場合の移動手段としては必要だったりするので、この購入が一概に責められるものではありません。


また、自動車の必要性が高いのに、資金がない場合に、ローンを組むこと自体も責められるものではありません。

当然ながら、ローンだと、手が届かない高い車を買えてしまうので、その返済計画や、全体の金額は冷静に考える必要はあります。

 

 

再度の減収

その後、数年間は、借金も大幅に増えることはなく、返済を続けていました。

しかし、2人目の子を出産することになり、以前と同じように収入が減ってしまい、消費者金融から借りるようになってしまいました。
その後、復職をして、何とか返済を続けてきました。


女性にとって、出産のための休業による減収は大きな問題になります。
出産によって、収入が減ってしまい、それが後に破産の理由になることもよく見かけます。

『専業主婦は2億円損する』という本もあるように、将来の収入のことを考えるのであれば、出産後、このように復職できる環境を整えた方が良いと思います。


特に、出産により家計収入が減るような場合は、出産後の復職で返済をする計画にするしかないこともあります。

出産自体は、夫婦で計画的なこともあれば、予期しないということもあるでしょう。


現在の雇用関係の不安定さからすれば、職場で復帰できるような形での休職にしておいた方が無難なことが多いです。

 

 

夫の減収

しかし、今度は、夫が転職を繰り返すようになり、生活費が不足すると、借金をして補うようになってしまい、借金は減りませんでした。夫自身も借金をしていました。

少しずつ支払いができなくなってしまい、金額が大きい債権者は任意整理をしました。

その翌年、夫と離婚することになり、離婚をして子供を育てていくのでは返済ができなくなると考え、自己破産するしかないと考えるようになりました。


任意整理では、毎月5万円を支払い、任意整理をしなかった労金の支払いが2万2000円程度、毎月の支払いが8万円弱になっていました。

自分だけの収入では、養育費用も考えると、支払は困難な状態でした。

 

 

同居家族の家計

相談者は、離婚後に祖父母のところで生活させてもらっていました。

離婚後に、子供が転校しなくても良い場所にいて受け入れてくれる家族が祖父母だったので、そこでお世話になることにしました。

祖父母は、昔の人なので、借金があることを知ると、家に住めなくなる可能性が高く、言えていませんでした。

電気代や水道代の明細は取得できましたが、ガス代の明細等はもらえていません。他の光熱費と同じく、祖父名義で契約をしているのは確かです。祖父母とは家計は全く別でした。


夫にも多額の借金があるため、離婚に伴い養育費の支払約束はしていませんでした。

このような家計状況の場合、祖父母とは家計が別だとして、自分の収支を提出することで、支払不能だと認めてもらえるのが通常です。

 

出産理由の自己破産

このように、出産や子育て関係の自己破産理由は、女性に多いです。
さらに、離婚をしているようなケースだと、この理由が目立ちます。


それだけ、出産による減収や費用負担が女性に偏っているような印象を受けます。

このような社会情勢もあってか、自己破産手続きの中で、出産や育児費用の負担による借金理由の場合には、裁判所も浪費などの点を問題視する事はそれほど多くないような印象を受けています。

 

本件においても、破産手続は問題なく認められ、免責許可が出ています。



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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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