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ケース紹介135 Yさんの事例

50代 / 男性 / 無職

借入の理由:住宅ローン


神奈川県厚木市在住の50代男性のケースです。

過去の住宅ローンを頑張って支払ってきたものの、失職してしまい、支払いができないという相談でした。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

 

住宅ローンで自宅購入

住宅購入を機に、住宅金融公庫と財団法人年金住宅ローン協会から住宅ローンを借り入れました。

住宅ローンは、毎月10万円。

ボーナス月には通常の支払いに加えて30万円のボーナス払い(年2回)の返済が必要に。

このころは、会社員として年収500万ほどありましたが、住宅ローンの返済はかなりきつく、生計を圧迫していました。

住宅ローンを組む際に、収入の何割などということで決めることも多いでしょう。

 

住宅ローンが高すぎて自己破産

住宅を売る不動産業者からは、当然ながら、高額の不動産を売られそうになります。

不動産業者が、どのように利益を得ているのかを考えれば、より高い契約を進めてくるのは当然でしょう。

また、銀行も、可能な限り、高い金額を重視した方が、利息収入を得られることになります。

これらの構造から、住宅ローンを組む際には、限界まで高いローンを組まされるリスクがあるのです。

人によっては、住居費は、収入の2割程度に抑えた方が良いとも言われています。

今回は、毎月の支払だけでも、厳しい数字になっているケースです。

 

 

住宅ローンのボーナス払いで自己破産

さらに、住宅ローンのボーナス払いは危ないです。
ボーナスというのは、権利として保障されているものではないので、会社の業績が落ち込めば、大幅にカットされたり、不支給になる事はあります。

このようなボーナスをあてにした返済だと、会社の業績によって、支払いが一気にできなくなってしまうリスクがあります。
特に、ボーナス払いの金額が割合として大きいような場合には、支払い不能になってしまうリスクが高まります。

ほかにも、会社の倒産リスクや、転職をする場合のボーナスが減るリスクなども考えると、ボーナス払いは到底勧められるものではありません。

特に、今回は、ボーナス月に30万円加算というものですが、このようなボーナスが保障されているような会社はほとんどないといえます。


相当に危ない住宅ローンの組み方です。

 

配偶者の収入をあてにした住宅ローン


住宅ローンを組む際に気をつけたい点としては、配偶者の収入をあてにする組み方です。

連帯債務などで、双方の収入をもとに住宅ローンを組むケースもあります。
これもリスクが高い組み方です。

夫婦の生活がずっと続くとは限りません。
離婚リスクもあります。

そうでなくても、配偶者が、いつまでも働けるとも限りません。

共働きであれば、結婚がセーフティーネットとして働きますが、当然ながら出産等により、退職することもあり得ます。


双方の収入を前提に組んでしまうと、子育て等にも影響が出てしまいます。
親による子育ての援助をあてにして、共働き収入を前提に住宅ローンを組むこともあるのですが、親が亡くなってしまいそのような前提が崩れてしまうケースもあります。

したがって、良い住居を手に入れたいという気持ちはわかりますが、2人の収入を前提にするのはより危ないといえます。

 

変動金利で住宅ローン支払い額が増額

住宅ローンの取り決めで、借り入れから5年経つと支払額が増える内容になっていました。

当初から余裕がなかったのに、利息の増額により支払い額が増え、厳しい家計に。

これも、高額の住宅ローンを組ませる仕組みです。


当初の何年間だけ、固定金利だったりとか、キャンペーンでの低金利の適用等によって、当初の支払い額を低く見せ、住宅ローンを組ませる手法です。


収入が徐々に増えていく時代であれば、このような契約に合理性もありますが、そもそも、最初から厳しい支払いのような場合には、無理な住宅ローン組んでいたということになります。

増額されたタイミングで全く支払いができなくなってしまいます。

将来の収入が増えることをあてにせず、トータルでの支払い金額を見たうえで判断することが重要です。

 

収入の減少で住宅ローンが厳しい

その後、勤務先会社の業績悪化により、定期昇給が止まり、増えた住宅ローンを支払う財源のあてがなくなり、さらに生活を切り詰める必要が出てきました。

業績悪化により、ボーナスも減ります。

定期昇給をあてにした返済計画ですが、崩れていきます。

 

養育費用により任意売却へ

子供の成長とともに生活費が膨らみ、生活を切り詰めても住宅ローンの支払いがおいつかなくなってきました。

この頃までに何度か住宅ローンを滞納していたため、住宅ローンの支払いを諦め、自宅を任意売却しました。

任意売却の結果、債務の完済にはいたりませんでした。

住宅ローンを組む際に、あまり考慮されないのが、将来の子育て費用です。


子供が何人生まれるかも計画できるものではありません。
また、その子供によって、かかる養育費をというのは変わってくるので、あらかじめ金額をいくらと見積もることすらできません。


通常、このような養育費用に関しては、甘く見積もってしまうため、予想以上に子供にかかる費用が増え、支出が増えてしまうことが多いです。


一般的にかかる、費用等については、複数のシミレーションが出されて、何歳ごろにどれぐらい支出が増えるのかなどは、一般論としてはある程度わかります。

住宅ローンを組むような場合には、このよう支出を甘く見積もってしまい、実際の子供の年齢とともに、予想以上の費用がかかってしまい、支出が大きく増えて支払いが不能になってしまうこともあります。

任意売却後の住宅ローン支払

残債務についてはしばらく払っていませんでしたが、数年後に債権者から連絡が来たので、夫婦合計で毎月3万円を支払うという和解契約を締結しました。

しかし、仕事の都合上、地方出張が多くなり、生活費が自宅と出張先の2ヶ所分かかるようになり、ますます生活を圧迫するようになりました。

転職するも、収入が3分の2に減少。


そのため、生活費が足りずに、消費者金融から借り入れをしました。


その後も、借りて返してという状況が続き、気がついたときには債務が返せないくらい多くなっていました。一つの借り入れ先を限度額まで借りてしまい、新たな借り入れ先から借りるような状態になっていたため、債権者数も増えていました。


住宅ローン以外に、月に7万円くらいを返済する生活に。

自分たちの生活費以外に、月に10万円の返済となると、当初の住宅ローンと同じ金額です。

その後、失職。完全に支払不能となり、相談に来たものです。

 

住宅ローン破産での免責許可

結局は、当初に高額の住宅ローンを組んでしまったのが、支払い不能になってしまった原因といいます。


特に、住宅を手放した後も、分割払いをしているなど、努力をしていたものの最終的には失職になってしまって収入がなくなったことから自己破産という選択になっています。


このような事情なので、免責不許可事由もなく、その事情もやむを得ないものとして、免責許可が問題なく出ています。

 

 


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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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