裁判、差し押さえをされた後の自己破産事例。神奈川県厚木市・横浜市の弁護士。

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 Tさんの事例

40代 / 女性 / パート

借入の理由:仕送り、詐欺被害


神奈川県厚木市にお住まいの40代女性のケースです。

エポスカードやオリンポス債権回収など複数の裁判を起こされ、差し押さえまでされたということで自己破産の相談がありました。

 

この記事は、

  • 借金が払えずに裁判を起こされた
  • 裁判を起こされて差し押さえがされた

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.11.30

 

裁判、差し押さえをされて自己破産の相談に

借金を払えなくなり、長期間放置していると、裁判を起こされるなどします。

裁判所の判決などが出されると、財産の差し押さえがされることもあります。

そこまで行くと、預金がなくなったり、給料の一部がカットされたりしますので、生活に支障が出ます。

差し押さえによっても完済されていない場合、また差し押さえがされるのではないかと怯えながら生活することになります。

本来は、払えなくなった時点で自己破産などの整理に進むべきです。また、遅くとも裁判を起こされた段階では、債務整理の相談に行ったほうが無難です。しかし、それでも放置し、差し押さえまでがされてしまい、初めて相談に来るという人もいます。

今回のケースでは、エポスカードから支払督促、SMBCコンシューマー・ファイナンスから民事裁判、オリンポス債権回収から支払督促がされ、オリンポス債権回収からこれを受けて預金の差し押さえまでされて、相談に来たという経緯があります。

3社目で差し押さえがされ、ようやく解決に向けて動き出したという流れです。

逆にいえば、1~2社では、支払督促や判決があっても、差し押さえにまで動かなかったということになります。

       

 

家族への仕送りで借金

当初の借金理由は、仕送りでした。

自分自身の収入が減ったことから生活費の補填という理由もありましたが、主には、病気に罹患し十分に働くことのできなかった九州に住む母への仕送り目的で借金をしていました。

親子には扶養義務があるため、生活ができなければ、一定の援助をする必要はあります。しかし、借金をしなければならないような状態では、そこまでの義務は認められません。

そのような場合に、親に十分な収入がなければ、生活保護を受けてもらうことも選択肢に入ります。

実際に、今回のケースでも、その後、仕送りは難しくなり、生活保護を受給することになりました。

 

詐欺被害で自己破産

その後、詐欺被害により借金が増えてしまいます。

最近では、SNS経由での詐欺により借金をしてしまう人が増えています。

今回は、それ以前のメール詐欺

資産家の男性の話相手になればお礼を貰えるという話で、様々な名目で(「話相手を紹介するために必要」、「お礼を振込むために必要」等)、アマゾンのギフト券を購入のうえギフト券番号を教えるよう要求され、これに応じてしまいました。

当初は手持ちのお金でギフト券を購入していたが、購入を求められるギフト券の金額が徐々に増額になったこともあり、借入れに頼るようになってしまいます。

最初は購入を要求されるギフト券は5000円程度でしたが、徐々に金額が上がっていき、1回で10万円分のギフト券の購入を要求されたこともありました。

一度支払いをすると、次々に要求がされ、もう少しでお礼を貰えると思わされ、お礼欲しさにアコム、プロミス、アイフルなどの消費者金融からも借金をしてしまいます。

結局お礼は貰えず、詐欺と気付いた時点では、約200万円の被害になってしまっていました。

 

詐欺被害などを受けた場合、精神的にも立ち直れず、借金を放置してしまう人も多いです。

相談者も、借金返済までできず、借金を放置。数社から支払督促申立てや訴訟提起されるも、対応せず、オリンポス債権回収から預金差押えを受けたのを契機に、「このままではいけない」と思い、弁護士に相談しに来たという経緯でした。

 

詐欺の損害賠償請求は難しい

詐欺被害の場合、法的には、加害者に対して損害賠償請求ができます。

これは権利であり、財産となります。自己破産では財産は処分されますし、必要があれば、そのための破産管財人が選任されます。しかし、回収できないことが明らかな場合には、回収不能であることを裁判所に示し、財産として取り扱わないよう働きかける必要があります。

今回、業者や「資産家」とのやりとりは,すべてメールで行われていました。

しかし、当時使用していた携帯電話は壊れてしまい、メールを復元することができません。証拠となるようなものは何も残っていません。

また、被害を受けてから既に5年以上が経過していることもあり、業者から被害回復を受けることは著しく困難と言わざるを得ませんでした。

当時、詐欺被害に遭ったことに気付きましたが、警察に相談したり、被害届を提出したりすることはしませんでした。騙された自分にも責任があるという思いもありましたし、夫には内緒にしていたため、露見してしまう事態は避けたいため、被害届も出さなかったというものでした。

 

親族との送金記録

自己破産では、預金通帳の取引明細は厳しくチェックされます。

裁判所に申告した借金以外に債権者がいないか、申告していない財産はないか等をチェックされるのです。

その際、個人名義の入出金記録は説明が必要になります。特に、親族との間で入出金記録があった場合、それが財産隠し、贈与、借金でないかなど説明しなければなりません。

今回も、妹や姪、母、叔母などとの間で取引があったため、借金の返済であったり、行事の費用であることを説明しています。

 

配偶者に秘密での自己破産

自己破産は、借金を精算し、生活を立て直す制度です。そのためには、同居家族の協力があったほうが良いです。

しかし、同居家族に自己破産や借金のことを話すと、逆に生活が立ち行かなくなってしまうこともあります。

そのような場合には、同居家族に伝えずに自己破産の申立をすることもあります。裁判所も個別事情によってやむを得ないものとして認めています。

今回も、夫がお金にうるさく、また、モラルハラスメントの傾向もあるため、借金の存在や破産申立てを行うことは内緒で進めています。

特に今回の借金の主な原因は、メール詐欺に引っ掛かったことにあるので、正直に打明けた場合、離婚されかねない状況にあります。

そのため、破産申立てに必要な書類の収集にあたって、夫の協力を得ることはできない事情を説明し、夫が管理している書類は、夫の不在時を狙ってコピーを取る等の方法でできるだけ集めるよう努めたものの、入手できなかったもののはその旨を報告して申立をしています。

家計支出に関する資料など、一部がないままでの申立をしています。

 

 

 

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