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ケース紹介

 

ケース紹介251 Kさんの事例

20代 /男性 / 無職

借入の理由:病気


海老名市にお住まいの20代男性からの自己破産相談でした。

親子で来所されたうえで、親から、子供名義の預金があり、最近、相当額を出金したとの話がありました。

このように、家族が貯めていた預金口座の存在が自己破産で問題になる事例は多いです。

そこで、自己破産と財産名義について解説します。

この記事は、

  • 子供の自己破産を相談したい
  • 子供名義の預金や保険がある

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.9.6

自己破産と財産名義

子供が自己破産をした場合、親が子供名義で貯めていた預貯金がどうなるかについては、いくつかの重要なポイントがあります。

名義の重要性

自己破産手続きにおいて、財産が処分の対象となるかどうかは、まず基本的に名義によって判断されます。したがって、子供名義の預貯金は、通常は子供の財産とみなされることになります。

実質的な所有者の判断

しかし、名義が子供であっても、実質的に親がその預貯金を管理し、親の収入から積み立てていた場合、裁判所はその預貯金を親の財産とみなす可能性があります。

裁判所は、実質と形式(名義)が異なる場合の財産について、預金の出捐者(実際にお金を出した人)が誰であるか、通帳や印鑑の管理を誰が行っているかなどの具体的な事情を考慮して、財産の帰属を判断します。

相続の際の名義預金などで、このような判断基準を用います。

これにより、名義だけでなく、実質的な所有者が誰であるかもポイントになります。

 

自己破産とは

自己破産は、借金を返済できない状況に陥った人が、裁判所に対して破産を申し立てることで、負債を法的に免除してもらう手続きです。

自己破産のメリットとしては、借金が免除される点があります。これにより、経済的に新しいスタートを切れるといえます。

これに対し、デメリットとして、信用情報に事故情報が登録される、一部の職業に就けなくなる可能性がある、財産が処分されるという点があります。

 

自己破産における財産の処分

自己破産手続きでは、破産者が所有する財産が処分の対象となります。

多くの裁判所で、20万円以上の価値がある財産は、裁判所によって現金化され、債権者に分配されます。

 

子ども名義の財産が処分対象になるケース

親が子どもの名義で預金口座を作成し、そこに一定額以上の資金を積み立てている場合や、保険契約を結んでいる場合、その財産が誰のものかが問題になります。

ここで重要なのは、「名義」以外に「実質的な所有者」が誰であるかという点です。裁判所は、誰がその財産のためにお金を出したのか(出捐者)を重視します。

 

財産の帰属についての裁判所の判断基準

裁判所は、財産の帰属先を判断する際に、以下の点を重視します。

・出捐者(お金を提供した人)は誰か
・財産の管理や処分を誰が行っていたか
・財産を名義人(この場合は子ども)が自由に使用できる状態だったか

 

出捐者の関係

財産の名義と実際の出捐者が異なる場合、裁判所はその財産が誰のものであるかを慎重に判断します。

例えば、親が自分の収入を使って子ども名義の口座に資金を積み立てていた場合、その財産は親のものとみなされる可能性が高くなります。

親が子どもの名義で作った財産を、子供の自己破産の手続きで守るためには、上記のポイントを主張・立証する必要があります。

多くの場合には、要調査とされ破産管財人がつきますので、破産管財人相手に交渉することになるでしょう。

この際、親が実際に資産を管理していたことを示す証拠や、原資が親の収入から来ていることの証明、なぜ子の名義で口座を開設したのか、合理的な説明や、通帳やキャッシュカードを親が保管していた状況などを示します。

 

財産の帰属の相談

子供の自己破産手続きを弁護士などの専門家に依頼しており、子供名義の預金がある場合には、しっかりと最初の相談から話をすべきです。

裁判所での認定がどうなりそうかの意見を聞き、対応を考える必要があります。

くれぐれも、自己破産の直前に名義変更や親名義の口座への預金の移し替えなどはしないようにしましょう。そちらの方が問題になりやすいです。

 

子ども名義の預貯金処分の可能性

以上は、財産が誰に帰属するのかの問題と子の自己破産手続きでの対応を前提にしていました。

逆に自己破産手続きが子供ではなく、親が自己破産をするという場合には、子供名義の預金であっても、親の財産として処分対象になることは考えられます。

親の収入から貯められた子供名義の預金口座であれば、それは親の財産と認定される可能性も高くなるでしょう。

「子どものために」と自身の収入から子ども名義の口座に入れていたとしても、実質的には破産者の財産とみなされることがあるのです。

自己破産では、過去の預貯金の明細もチェックされ、そこに家族名義への送金記録があれば調査されることになります。

 

なお、同居家族の通帳や口座履歴の提出が必要かどうかは裁判所によって異なります。

神奈川県では、原則としては、家計に関係がない家族の通帳や口座履歴の提出は不要ですが、破産者からの送金記録があるような通帳については開示を求められることもあります。

 

子供名義の口座があった自己破産事例

親子で相談に来て、子供の自己破産をしたいとの希望がありました。

ただ、小さい頃から、親の収入から貯めていた子供名義の預金口座があり、直近で相当額の使用をしており、残額は数十万円になっているとのことでした。直近での支出は、100万円以上と高額。ただし、ほとんどの支出の明細は、親が記録していました。

事情を確認すると、子が予期しない病気によって長期入院、親が子供名義の預金を使って医療費や賃貸物件の退去費用等を支出していたところ、回復後に多額の借金が発覚したというものでした。

親による子供名義の預金利用もやむを得ないところでした。

この口座が親の財産と認定されなくても、全財産が数十万円であり、子供が仕事を失っていることなどから自由財産拡張が認められる可能性が高い状況でした。

神奈川県では、管財事件になるものの、99万円までの資産は自由財産拡張が認められることが多いです。裁判所や破産管財人によってばらつきはあり、断定はできないものの、残せる可能性が高いという状況です。

本件でも、細かい支出明細まで残っていたので、これらを提出し、親が貯めていた子供名義の預貯金口座の残高も残すことができています。

 

 

 


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