
自己破産ケース
ケース紹介
ケース紹介256 Sさんの事例
40代 /男性 / 会社員
借入の理由:投資詐欺被害
不動産投資詐欺に遭うと、巨額のローンだけが残り経済的・精神的な苦痛を伴います。
巧妙な手口が横行する中、被害に気づいた際の迅速な対応が重要ですが、業者側がうまく逃げ、回収不能となり借金だけが残されることも多いです。
返済不能な状況では自己破産も選択肢となります。
今回は、不動産投資詐欺被害による借金を自己破産したいとの相談を受けたため、不動産投資詐欺の手口から解説します。
この記事は、
- 不動産投資詐欺の被害に遭った人
- 詐欺被害による借金を負った債務者
という人に役立つ内容です。
自己破産における偏頗弁済
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、債務者(借り手)が借金の返済に行き詰まった際に、複数ある債権者のうち特定の相手にだけ優先して返済や担保提供を行う行為を指します。
自己破産や個人再生といった手続きでは「債権者平等の原則」が重視されており、債権者は公平に扱われなければなりません。
不動産投資詐欺被害と法的救済策の徹底解説
不動産投資の勧誘や甘い話に乗ってしまい、気づけば詐欺被害に遭って多額の借金を抱えてしまうケースが後を絶ちません。悪質な不動産業者による詐欺は、サブリース契約や無理なローンの斡旋、価値の低い物件を高額で売りつける手口など様々で、被害者には深刻な経済的・精神的負担がのしかかります。本記事では、不動産投資詐欺の典型的な手口から、被害に気づいた際の初期対応、消費生活センターや弁護士への相談の重要性、自己破産を含む法的救済手段(個人再生・任意整理など)のメリット・デメリット、手続きにかかる費用や期間、二次被害を防ぐポイント、そして「家族に迷惑がかかるか?」「仕事は続けられるか?」といった被害者のよくある疑問まで詳しく解説します。専門家の視点から法的な信頼性の高い情報を提供し、一人で抱え込まず適切に対処するための指針を示します。被害に悩む方が新たな一歩を踏み出せるよう、弁護士事務所の公式サイトの記事として分かりやすく整理しました。
不動産投資詐欺の典型的な手口
まずは、不動産投資詐欺にはどのような手口があるのか、代表的な例を押さえておきましょう。
手口を知ることで、「これはおかしい」と早期に気づく助けになります。
サブリース契約を悪用した詐欺
一括借り上げ(サブリース)で「空室があっても〇万円の家賃を半永久的に保証する」「家賃は絶対下げない」などと甘い言葉で勧誘する手口です。
実際には契約更新時に大幅な賃料引き下げ条項があり、数年後に「保証家賃を減額します」と言われて想定外の赤字に陥るケースが典型です。
賃料が下がってローン返済に行き詰まっても、借地借家法上サブリース業者(借上げ会社)が有利なため契約解除は容易ではなく、オーナーは頭を抱える羽目になります。
違法な住宅ローン利用を強いる詐欺
本来は自宅購入者向けの低金利ローン(例:フラット35)を悪用し、「自己資金ゼロで投資できる」と若年層を言葉巧みに勧誘して投資用物件なのに住宅ローンを組ませる手口です。
投資目的で住宅ローンを使うのは契約違反であり、発覚すれば残債一括請求という厳しい結果が待っています。
実際、2024年には街頭で若者を勧誘しこの手口で約6億5千万円もの融資をだまし取ったグループが逮捕されました。
融資金の一部は業者が搾取し、名義人である被害者だけが巨額の住宅ローンを背負う構図です。
収入も貯蓄も乏しい若年層が全額返済できるはずもなく、結果的に自己破産や任意売却に追い込まれるケースが後を絶ちません。
不良物件の高額売却(デート商法型の詐欺など)
条件の悪い物件や実態のない架空物件を「絶対に儲かる優良物件」と偽り、高値で購入させる手口です。
例えば、恋愛感情につけ込むデート商法では、親しくなった相手から「将来のため」と勧められて投資用マンションを契約させられます。
契約後に相手と連絡が取れなくなり、物件は実際の相場の半額以下の価値しかなく、高額なローンだけが残るというケースが典型です。
質の低い物件を相場とかけ離れた価格で買わされるため、被害者は売却しようにも大きな損失を被りがちです。
実際、空室だらけのマンションにサクラの入居者を使って満室を装い、「利回り15%」とうたって相場以上の価格で売りつけ、購入後すぐ半数が退去してしまった例では、被害者は泣く泣く物件を手放しましたが購入時より1,000万円近く安い価格でしか売れませんでした。
上記以外にも、
手付金詐欺(物件の契約手付金だけ受け取って業者が消える)、
満室偽装(実際は空室だらけなのに「満室高利回り」と嘘をついて契約させる)、
二重譲渡(一つの物件を複数の人に売る)、
海外不動産詐欺(現地確認が難しいのをいいことに存在しない海外物件への投資話でだます)など、巧妙な手口が報告されています。
いずれも「絶対儲かる」「特別に良い話」といった謳い文句で焦らせ、冷静な判断を奪うのが共通点です。
被害者が抱える経済的・精神的負担
不動産投資詐欺に遭ってしまうと、被害者には計り知れない経済的負担と精神的苦痛が生じます。
典型的には、高額なローンだけが残り毎月の返済に追われる生活を強いられます。
例えば前述のデート商法のケースでは、マンション購入のローンの支払いだけが残り、金銭的にも精神的にも大きな傷が残ってしまいました。
毎月数万円~数十万円もの赤字を自腹で補填する状況に陥り、貯金を取り崩したり他の借金で返済を回す「自転車操業」に陥る方もいます。
経済的困窮に加え、「自分がだまされた」という自責の念や将来への不安から、精神的ストレスや抑うつ状態に陥るケースも少なくありません。
大切なマイホームを失う苦渋の決断を迫られたり、最悪の場合は返済不能で自己破産に追い込まれることもあります。
近年報じられたシェアハウス投資詐欺(かぼちゃの馬車事件)では、多くのオーナーが市場価格より高い費用を払わされ、家賃収入が約束通り入らずに自己破産に追い込まれました。
こうした被害は若い世代にも広がっており、20代の相談件数が年々増加しているとの報告もあります。
詐欺だと気づいたときに取るべき初期対応
「これは詐欺かもしれない」と感じたら、被害を最小限に食い止めるために迅速な対応が肝心です。
以下は初期対応のポイントです。
一人で悩まず誰かに相談
とりわけ消費者ホットライン「188(いやや!)」への相談がおすすめです。電話をすれば、お住まいの地域の消費生活センターに繋がり、無料でアドバイスを受けられます。家族や友人でも構いません。不安な気持ちを共有し、客観的な意見をもらうことで冷静になります。
契約書類や証拠の確保: 不動産売買契約書、重要事項説明書、ローン契約書、業者とのメールやSNSでのやり取り、パンフレット等、詐欺の証拠になりそうな資料はすべて保存してください。悪質業者の中には、LINEのやりとりを消去するよう求めてくる場合もありますが、応じないようにしましょう。
あとで法的措置を取る際に重要な証拠となります。
紙の書類は無くさないようファイリングし、メール等はスクリーンショットや印刷をしておくと安心です。
クーリングオフの検討: 契約して間もない場合、クーリングオフ(書面通知による無条件解約)が適用できる可能性があります。宅地建物取引業法では、業者の事務所以外の場所で契約した場合などに8日間のクーリングオフ期間が認められています。うっかり契約してしまっても諦めず、条件に該当するなら早急に書面で契約解除の意思表示を行いましょう。
迷ったら消費生活センターに相談すれば手続き方法も教えてもらえます。
架空物件など明らかに詐欺罪(刑法)に該当する悪質なケースでは、警察への被害届提出も検討してください。
契約書や振込記録などの証拠を持参すれば捜査が開始される可能性があります。
刑事事件として加害者が検挙されれば、詐欺の抑止にも繋がります(ただし刑事処罰と被害回復は別問題であり、被害金の返還は民事手続きで請求する必要があります)。
契約中止・追加被害防止
業者からさらに金銭を要求されたり、新たな契約書への署名を求められても、決して応じてはいけません。
疑わしい相手との連絡や接触は最小限に留め、以後の支払いは絶対にストップしましょう。相手にこれ以上つけ込まれないようにすることが大切です。また、相手から「違約金を払え」「ローンを解約すると損だ」などと言われても鵜呑みにせず、まず専門家に相談してください。
弁護士への相談・依頼
被害額が大きかったり、法的な解決(契約の取消しや損害賠償請求、債務整理など)が必要になりそうな場合は、弁護士への相談が解決手段となります。
弁護士は法律の専門家として状況を分析し、民事訴訟(加害者への損害賠償請求)や刑事告発(警察を通じた捜査)など適切な手続きを選択できます。
状況から現実的な回収可能性、コストをかける価値を教えてもらえるでしょう。
自己破産の選択とメリット・デメリット
不動産投資詐欺で負った借金がどうしても返済できない場合、最後の手段として自己破産を検討せざるを得ないことがあります。
不動産投資の場合、ローン残額が多額になることが多く、債務整理の中でも任意整理による解決可能性は低いです。
個人再生を行える事案もありますが、多くの場合、不動産の処分も含めて自己破産をせざるを得ないでしょう。
自己破産とは、裁判所に「支払不能」であることを認めてもらい、法律に従って借金を帳消し(免責)にしてもらう制度です。
メリット(長所): 最大のメリットは、裁判所の免責許可により借金の支払い義務が原則ゼロになることです。
詐欺被害による巨額の負債でも、自己破産が認められ免責されれば、以後返済を求められることはありません。
借金の重圧から解放され、生活を立て直すための新たなスタートを切るチャンスが得られます。
また、手続きを弁護士に依頼すれば債権者からの取り立ても止まり、精神的にも安定を取り戻せます。
法律上も、自己破産は「経済的更生の機会を与えるための制度」であり、破産したことで本人の生活が破綻してしまっては本末転倒です。そのため、生活必需品や一定額以下の現金などは手元に残すことが認められており、破産後も普通の生活は送れるケースが大半です。自己破産したからといって人生が終わるわけではないので、必要以上に恐れる必要はありません。
デメリット(短所): 一方で自己破産には無視できないデメリットもあります。
まず、20万円以上の価値がある財産は処分(没収)される点です。具体的には、自宅や土地などの不動産は原則として競売や任意売却で処分されます。ローン中のマイホームは手放さざるを得ず、同居の家族がいれば住居を移る影響があります。
自動車もローン残債がある場合は引き揚げ対象となり、ローンがなくても評価額が高ければ処分対象です。
さらに、官報(政府発行の機関紙)に氏名や住所が掲載されるため、記録として破産した事実が公表されます(もっとも一般の人が官報を見ることは稀なので、周囲に知られるリスクはそれほど高くありません)。信用情報(いわゆるブラックリスト)にも事故情報が登録され、5~10年程度は新たな借入やクレジットカード作成ができなくなります。
また、破産手続開始から免責確定までの間(数ヶ月~1年程度)、一定の職業・資格制限があります。例えば弁護士・司法書士や宅地建物取引士などの資格者、会社役員、保険外交員などは、一時的に業務ができなくなります(免責確定後は復権します)。ただし一般の職業には影響ありません。
もう一つ留意すべき点は、税金や養育費など一部の債務は非免責債権として自己破産しても免除されないことです。
とはいえ、詐欺被害による借金(金融機関からの借入等)は通常免責の対象となります。
不動産投資詐欺関係の場合、詐欺被害に関する損害賠償請求権や不動産などのため管財事件になり、コストが高くなるというデメリットもあります。
自己破産以外の選択肢(個人再生・任意整理など)
借金問題の法的な解決策は何も自己破産だけではありません。他にも個人再生や任意整理といった手段があり、状況次第ではそちらの方が適している場合もあります。
個人再生
個人再生とは、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、残額を3~5年かけて分割返済する計画を立てる手続きです。
利用には安定した収入があること等の条件がありますが、認可されれば借金を元本からおよそ1/5~1/10程度に圧縮できます。
例えば、2,000万円の借金がある場合、小規模個人再生なら約300万円まで減額され(債務額に応じ最低弁済額あり)、これを3年間で返済する計画となります。減額後の300万円を36回で払うと毎月8.4万円強です。このように借金総額を大きく圧縮できる点が個人再生の利点です。
もう一つの大きなメリットは、住宅ローン特則(住宅資金貸付債権に関する特則)を利用すれば、自宅を維持したままその他の借金を整理できる可能性があることです。マイホームを手放したくない場合に有力な選択肢となります。自動車など生活必需の資産も処分されません。手続き中も職業制限はなく、自己破産に比べ世間体の不安も小さいでしょう。
ただ、不動産投資物件やローンが残っている状態だと、その借金がいくらになるのか不透明なため後で問題になりやすいです。不動産が処分されているなどの場合には、使える余地があります。
任意整理
任意整理とは、裁判所を通さず債権者(貸金業者やカード会社等)と直接交渉して、将来利息のカットや返済回数の調整等により毎月の返済負担を軽減する手続きです。
弁護士(または認定司法書士)が代理人となり、貸金業者と和解交渉を行います。
裁判所を介さないため手続きは比較的簡易ですが、元本自体は減額されませんので、投資ローンなどが含まれていると現実的ではないです。
また消費者金融を中心に、任意整理の条件は、年々厳しくなっています。
二次被害に遭わないための注意点
詐欺被害者が気を付けるべきなのは、「泣きっ面に蜂」の二次被害です。
悪徳業者は一度お金をだまし取った被害者に対し、さらに追い打ちをかけることがあります。
例えば、「被害金を取り戻せる」と偽って救済を装った詐欺を仕掛けたり、債務整理をしようとする被害者に高額な手数料を要求する悪質な業者も存在します。
不動産投資では、価値が低い不動産を高く買ってくれるといいつつ、お金を払わせる手口が使われやすいです。
弁護士の依頼業務
弁護士に不動産詐欺の借金の自己破産を依頼した場合、回収可能性を検討します。
可能であれば詐欺契約を取り消したり、被害金の回収ができないかを検討します。訴訟を提起までできるかというと、自己破産の依頼の場合、そこまでのコストを負担できない人が多く、破産管財人に資料を引き継ぎ対応してもらうことが多いでしょう。
不動産投資詐欺被害の自己破産事例
相模原市居住の40代男性からの相談がありました。
12社5000万円の債務を負っていました。
不動産投資をしていたところ、Facebookの広告から、投資塾を知り、投資を勉強しながら、AI取引システムにより効率よく投資をして収益を上げていくとの勧誘を受けてしまいます。
高額な運営費等を支払わされたところ、そのうちに担当者とも連絡がとれなくなり、投資詐欺であったことが判明。
他の弁護士に債務整理を依頼したところ、債権者の漏れがあり偏頗弁済が見られました。
他の弁護士が辞任し、ジン法律事務所弁護士法人に自己破産を依頼という流れでした。
詐欺被害については回収不能と判断。
管財事件での自己破産申立を行い、預貯金等について99万円の範囲で自由財産拡張を認めてもらっています。
貸金業者に対する偏頗弁済がありましたが、破産管財人が否認し、回収しています。
不動産の処理等もあったため、債権者集会は3回開かれ、申立から約1年で終了、免責許可が出ています。
不動産投資詐欺の借金がある人の自己破産相談・依頼も増えています。ご相談は無料で受け付けています。
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