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ケース紹介

 

ケース紹介62 Kさんの事例

50代 / 男性 / 契約社員

借入の理由:事業資金


厚木市にお住まいの50代男性のケースです。

会社経営をしていたものの、うまく行かずに会社は自己破産。

会社のローンを保証していたものの、自宅は守りたいということで個人再生を当初希望されていました。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

会社破産と個人再生

会社の代表取締役として、保証債務を負っていても、その金額によっては個人再生を選択することもできます。

代表取締役所有の自宅を守りたいという場合に、自宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていない、住宅ローン以外の債務が5000万円より少ない、借金を減額すれば支払えるだけの安定収入があるなど、一定の要件を満たせば、個人再生により、他の借金は減額、住宅ローンは支払いを維持することで、自宅を守れます。

このように、会社は破産、代表取締役は個人再生という方針もよくあります。

 

 

 

個人再生と離婚

個人再生や自己破産の準備中に、夫婦仲、家族関係が悪くなってしまい、離婚、別居となってしまう例も残念ながら多いです。

個人再生の場合には、自宅に居住していることが必要です。

離婚により、家を出て別居しまった場合には、個人再生は使えません。

自宅に住み続けたとしても、離婚となってしまった場合には、その家に住み続けなくないという理由で、住宅ローンを払い続けるほどの意志が持てない、個人再生から自己破産に切り替えるというケースも多いです。

今回も、残念ながら、夫婦関係が悪化し、個人再生から自己破産への切り替えとなりました。

当初から自己破産が確定していれば、法人破産と同時に申立をし、同じ破産管財人が選任されます。

しかし、時期がずれる場合には、別の破産管財人が選任されることも多いです。

この場合、余計に管財予納金がかかってしまいます。

 

 

 

支払いができなくなる経緯

父親の会社を引継ぎ、経営をするとともに、住宅ローンを組んで自宅を購入していました。


会社の保証債務も引継いでいました。

その後、会社の業績が悪化し、保険を解約して家賃支払や返済資金等の運転資金にあてましたが、回復しませんでした。結局、会社の店舗を閉鎖しました。

会社を破産させた後、就職したうえで自宅は守ろうと考えていたのですが、体調不良により、手術をしなければならず、入院するなどしました。

これを機に、妻との関係が悪化、退院後、自分の家ではなく、実家に帰り、実家で療養することとなりました。

妻とは会話ができない一方で、預金通帳、カード等は全て管理されていました。住宅ローンの返済資金管理も妻がしており、保険の解約指示なもどもされました。

リハビリを続けたものの、完治せず、後遺症が残り、技術職への就職はできないことが判明しました。

会社の破産手続きが終了後、自身も自己破産しかないと考えるようになり、そちらの手続きを進める事となりました。

 

自宅不動産の処分や、妻が管理している預金や学資保険の扱いが問題になったことから、破産手続きの中でも、管財手続きとなりました。

 

 

自由財産の拡張

学資保険については、ご自身名義のものもあり、その帰属が問題となりました。

妻側からは財産分与の主張がされる一方で、相談者としても、子の学費等に使いたいという気持ちがありました。

また、保険の保険料は、申立人名義の銀行口座から引き落とされているものの、妻が管理し、相当額の入金は、妻の収入によるものであることが認められました。

このあたりを破産管財人と調整し、一部を自由財産拡張としてもらい解決することができました。

 

 

 

離婚の成立

破産手続きと並行して、離婚交渉も進み、財産分与と破産手続きの調整をしながら、最終的には、離婚も成立することとなりました。

自己破産と離婚との関係では、財産分与として妻に渡したいという主張で、偽装離婚のような形で希望される人もいますが、破産手続きとの関係ではもちろん問題となります。

ただ、本件では、別居等、婚姻関係破綻が明らかに認められたことや、相手方にも弁護士がつくなどしていたこと、こちらの主張が、どちらかといえば、破産財団に有利な主張をしていたことから、そのような疑いをかけられることはなく、破産手続きは進めることができました。

破産手続きの前後で、財産を配偶者に移転しているようなケースでは、破産管財人から否認されるリスクもありますので、くれぐれも素人判断で動かないようにしましょう。

 


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