車の自由財産拡張の自己破産の事例。神奈川県厚木市・横浜市の弁護士。

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ケース紹介

 

ケース紹介249 Uさんの事例

70代 /女性 / パート

借入の理由:保証


伊勢原市にお住まいの70代女性からの自己破産相談でした。

夫が経営していた会社の借金の連帯保証人になっていったところ、会社が自己破産となり、自分のカード債務も含めて自己破産の依頼がありました。

自分の老後資金として預貯金を貯めていたほか、自動車も購入するなどしており、一定の財産がある状態でした。

管財事件となる見込みでしたので、そのなかで自由財産拡張により自動車を残せるかがポイントになりました。

そこで、今回は、自由財産拡張についても解説し、具体的にどのようにすれば車を残せるのかを解説します。

この記事は、

  • 自己破産を検討中、財産あり
  • 自由財産拡張について押さえておきたい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.8.28

 

自由財産とは

自由財産とは、破産手続において、破産者が手元に残すことができる財産のことを指します。破産法では、破産者の生活の維持と再建のために最低限必要な財産を保護する目的で、一定の財産を自由財産として定めています。

自由財産は、破産管財人による管理や処分の対象とならず、破産者が自由に使用・処分できる財産です。これにより、破産者は最低限の生活を維持し、新たな出発を図ることができます。

つまり、自由財産は、自己破産をしても法的に残せる財産です。

 

自由財産の拡張

自由財産の拡張とは、法律で定められた基本的な自由財産の範囲を超えて、破産者の個別の事情に応じて、裁判所の判断により自由財産の範囲を広げることを指します。

基本的な自由財産だけでは十分な生活再建が困難な場合も多く、追加の財産を確保することで、より安定した生活基盤を提供する目的です。

破産者の年齢、健康状態、家族構成、職業などの個別事情を考慮し、それぞれのニーズに合わせた財産保護を可能にする制度です。

この自由財産拡張が認められれば、自己破産をしても一定の財産を残すことができると言われます。

 

法定の自由財産

破産法では、法定の自由財産として、一定の財産を決めています。

現金:99万円まで

差押禁止財産:民事執行法で差押えが禁止されている財産

差押禁止財産としては、生活に必要な家具、家電、2ヶ月間の生活に必要な食料および燃料、職業に必要な器具、法令により給付された給付金(年金、恩給など)等があります。

 

自由財産の拡張の申立て手続き

神奈川県の運用では、自由財産の拡張を求める場合、破産申立時に提出する財産目録に自由財産拡張の記載をします。

そのうえで、破産管財人との面談などで、拡張の必要性や相当性など詳細な事情を伝える必要性があるとされた場合には、別に書面を作成します。

生活状況や今後の収入見込みなども詳細に説明する必要があるでしょう。

 

裁判所は審査の結果を踏まえ、自由財産の拡張を認めるかどうかの決定を下しますが、多くの場合には、破産管財人の判断を尊重するでしょう。

 

自由財産拡張の判断基準

自由財産の拡張を認めるかどうかの判断において、破産管財人や裁判所が考慮するポイントには、次のようなものがあると言われます。

1. 破産者の生活状況:
・年齢、健康状態、家族構成
・現在の生活水準と必要最低限の生活水準との比較
特別な出費の有無(医療費、教育費など)

2. 破産手続開始時に有していた財産:
財産の種類、金額
・財産の取得経緯や使用目的

3. 今後の収入見込み:
・現在の職業や収入状況
・将来の就労可能性や収入の見通し

4. 債務の状況:
・債務の総額と内訳
・債務が発生した経緯

5. 破産に至った経緯:
・破産の原因(事業の失敗、病気、失業など)
・債務者の帰責性の程度

6. 拡張を求める財産の性質:
財産の種類(現金、預金、動産、不動産など)
・財産の必要性(生活維持、職業継続のためなど)

7. 債権者への影響:
・拡張によって債権者が受ける不利益の程度
・債権者の数や性質(個人、法人など)

8. 社会通念:
・一般的な生活水準との比較
・社会保障制度の状況

9. 地域性:
・居住地域の生活コスト
・地域の経済状況

10. 将来の生活再建の可能性:
・自由財産の拡張が生活再建にどの程度寄与するか
・破産者の自立支援の必要性

破産者が高齢、健康状態が悪い場合には、医療費支出の必要性が高いので、自由財産拡張が認められやすい。

財産についても預貯金などは現金と同視されやすく拡張が認められやすいが、株式などは拡張されにくい。

破産者や同居家族の収入が高い場合には、必要性が低いので、自由財産拡張が認められにくいという関係にあります。

自由財産拡張を認めてもらいたい場合には、このような要素の中で、自身に有利な事情を具体的に示していく必要があります。

 

 

自由財産の拡張が認められる具体例

自由財産の拡張が認められるかどうかは、裁判所の運用によって異なります。

もともと、預貯金について20万円までの拡張、

生命保険や損害保険の解約返戻金について、20万円程度までの拡張、

処分見込額が20万円程度以下の自動車などは、自由財産拡張が認められる傾向にありました。

神奈川県では、これらと自由財産の資産の合計額が99万円までは、現金の自由財産と類似の評価をし、拡張を広く認めるべきだとの運用がされています。ただし、実際の運用では、担当部署や破産管財人によってバラツキがある印象です。

 

自動車の自由財産拡張の事例

神奈川県伊勢原市にお住まいの方の事例を紹介します。

この地域では、預貯金や自動車など総額99万円までの自由財産拡張は比較的緩やかに認められています。

財産状況を簡略化すると、次のようなものでした。

預貯金:120万円

自動車:査定額170万円

申立時には、預貯金のうち、99万円を手元に残し、これを上回る部分と自動車は、破産管財人に引き継ぐという方針でした。しかし、破産管財人との面談などで、やはり自動車を残したいとの意向に変わりました。

そこで、預貯金120万円を破産管財人に引き継いだほか、自動車のうち99万円を上回る71万円を家族の援助で破産管財人に引き継ぎ、自動車を破産財団から放棄してもらうという扱いとなりました。

要は、破産者の財産が合計290万円、99万円を残し、残額は191万円となります。

この191万円を破産管財人に引き継げるのであれば、財産を残せるという取り扱いがされました。

このように、財産の評価額のうち、99万円を上回る部分を破産管財人に引き継ぐことで、財産自体を残すという方法は、保険などでも使われる方法です。

破産管財人によっては、この価格の車両を手元に残すには、自由財産拡張の相当性が認められるか協議が必要になることもあるでしょう。

 

 

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