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ケース紹介

 

ケース紹介199 Nさんの事例

30代 /男性 / 会社員

借入の理由:旅行、携帯キャッシュバック


厚木市にお住まいの30代男性のケースです。

収入が減ってしまい、旅行費用などで使った借金が払えなくなってしまったとの相談でした。

当初は任意整理での依頼がありました。

この記事は、

  • 旅行などの浪費で自己破産を考えている人
  • 任意整理の支払いが難しい

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.17

 

旅行費用での借金

数年前から、趣味で全国各地に旅行に出かけるようになりました。

一人で行ったり、現地で友人と待合せたりしていたそうです。

最初は収入の範囲内で行っていましたが、次第に原資が足りなくなり、給料は旅費の支払いに充て、食品や日用品の購入、外食費等を携帯決済を利用して支払うようになりました。

実質的には借金で旅行に行っていると評価されかねません。

過度な支出であれば、免責不許可事由浪費になってしまう内容です。

旅行支出がある場合、免責不許可事由の報告として、どの程度の頻度であったのか、1回の支出金額がいくらくらいだったのかを報告します。

旅行が趣味でとのことで、国内を中心に、日帰りや1泊から2泊程度の旅行に行き、年間70万円くらいを使ったとのことでした。また、過去には、旅費として毎年100万円くらいを使ってもいたそうです。借入れをして補っていたということもあり、浪費にあたる可能性が高い事案といえます。

浪費になるかどうかは、収入・財産額と支出額のバランスで判断されます。

 

キャッシュバック目的での携帯契約

さらに、キャッシュバックを得るために、携帯電話回線をたくさん契約するようになったとのことです。

携帯電話を2台契約すると数万円がもらえる、というようなキャッシュバックでした。

最も多いときで、20回線くらい契約。

しかし、電話料金の支払いがあるので、キャッシュバックで現金を得る方法は長期的には赤字でした。

一時的な先送りに過ぎないという結果になってしまいました。

携帯電話関係のキャッシュバックは、やり方によって利益が出ていた時期もありました。

自己破産の相談の中では、事業としておこなっていたという人もいました。

しっかり青色申告までして利益を一時的に出していたという人でした。しかし、これは携帯電話機を良いタイミングで売却できることが前提だったため、その後の規制、方針変更で利益が出なくなってしまっています。

今回のケースでも、長期的には赤字になってしまったとのことで、キャッシュバック率の変化によって影響を受けたものと思われます。

ローンで購入したものを売却となると、換金行為に近い話になってきます。

 

携帯決済で借金

その後、携帯電話を使い、商品や生活必需品を購入していました。

携帯会社を利用しての決済です。クレジットカードのように利用ができ便利なので活用していたとのこと。


この頃は、会社の残業代が多く、何とか収入から支払いができていたそうです。

携帯を利用しての決済も、未払い分は債務になります。

自己破産を進める際には、携帯電話会社を債権者として債務を計上します。

 

収入が減り支払いが厳しく

仕事中に事故を起こしてしまい、残業が激減し、収入が大きく減ってしまいました。
これにより返済が厳しくなりました。携帯電話の維持が出来ず、解約するようになりました。

そうすると機種代金の一括払いを求められ、ますます返済が困難になるという悪循環に。

 

任意整理の依頼

返済が難しくなってきたため、任意整理を弁護士に依頼

将来の利息をカットしてもらえれば、借金を払うことができるのではないかと考えました。

任意整理は、10年以上前の高金利での支払いがなければ、借金自体を減らせるものではありません。過去に高金利の支払いがあれば、過払い利息が精算され、借金が減ったり、過払金が戻ってくることもありますが、年利20%台での支払いがないとこのような効果は得られません。

任意整理により借金を減らすスピードは早まるのですが、元金自体を減らせるものではなく、また、毎月の返済額がそこまでラクにならないケースも多いです。

 

会社に残業を増やすように頼みましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、残業が増える見込みはありませんでした。

そのため、任意整理での負債整理を断念し、自己破産を進めることとなりました。

任意整理では、和解提案した後に断念して取り消し、自己破産への切り替えをしています。

 

競馬と自己破産

自己破産の申立では、競馬等のギャンブル行為など免責不許可事由になりそうな事情があれば説明する必要があります。

今回の事例では、競馬をしていたとの申告がありました。

しかし、その収支を記録からまとめていくと、トータル収支はプラスでした。

債務増大に寄与していません。       

破産法上、免責不許可事由になるのは、ギャンブルにより財産を著しく減らしたり過大な債務を負担したことです。

プラスの場合には、不許可事由にはなりません。


管財人費用の積立

競馬について免責不許可事由にならないとしても、裁判所の判断で、破産管財人を選任する管財手続となりました。

他に浪費といえる事情があったことや、携帯電話のキャッシュバックについては、調査が必要とされたものです。

相談時から、管財手続になる可能性もお伝えしたので、ここはやむを得ないところです。

 

自己破産の申立時に同時廃止を希望していたものの、裁判所の判断で管財手続とされた場合、破産管財人の費用、管財予納金を支払う必要が出てきます。財産があればそれを換金したり提出することで済むのですが、今回のような免責調査のための管財手続の場合には、財産がないことがほとんどです。

免責調査型の管財手続で裁判所(管財人)に払う予納金は20万円であることが多いです。

今回も、この20万円を準備するように言われました。

自己破産をするような人の場合には、20万円を一括で支払うのは難しく、分割して積み立てることがほとんどです。

どの程度の分割まで許されるかは裁判所の判断になりますが、神奈川県では、4~5か月程度は待ってもらえることが多いです。

今回のケースでは、4万円の5回払いでの積立となりました。

 

管財予納金の準備後に破産手続き開始決定

このような積立をする場合には、積立終了後に裁判所に報告し、そこで初めて破産手続き開始決定や破産管財人の選任となります。

それまでは、自己破産の申立をしたものの、決定が出ていない、保留になっているという状態です。

破産手続きでの財産処分の基準時である破産手続開始決定は出ていないことになりますので、決定までに財産が増えた場合には処分対象となります。

価値が変動する資産を持っている場合には注意が必要です。

また、理論的には、債権者からの判決に基づく差し押さえ、強制執行もありえます。

このような不利益を避けるためには、早めに管財人費用を準備するほうが良いことになるのです。

 

裁量免責許可

破産管財人による免責調査が行われた結果、無事に裁量免責をもらえ、借金の支払義務はなくすことができています。

裁量免責は、免責不許可事由があっても裁判官の裁量で免責にし、借金をなくすことです。

破産管財人の意見を聞いたうえで、このような判断をしてくれることが多いです。

 


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